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95年続いた銭湯をオフィスに。まいあめが選んだコミュニケーション文化の継承。

オフィス外観

オフィスを2023年の12月に移転しました。
車で3分、地元から地元への引っ越しです。
繁忙期の大変忙しい時期の引っ越しでした。一部の部門はまだ旧事務所に残っていて、2月に入ってからの完全引っ越しになりますが、業務自体は順調に進んでいます。

さてはて、引っ越ししたオフィス自体がちょっと変わった場所なのでご紹介したいと思います。

白菊温泉外観

ここは元々、「白菊温泉」という銭湯でした。

コロナ禍で銭湯自体の休業を余儀なくされ、同時期にボイラーも故障してしまったこともあり、2021年に銭湯の事業を廃業されたのでした。地元に愛された、住宅街の中にある銭湯でした。一日頑張った、汗をかいた人の疲れを癒す大切な場所でした。

話は変わり、実は、弊社には数年前から抱えたままの大きな課題がありました。旧事務所は自宅の一部をオフィスにしており、従業員が増えるたびにリフォームを重ねることでなんとか騙し騙し事務所を広げて営業をしていました。しかし、今後立ち上げる新規事業や通常業務でも人材が必要になり、どうしても旧事務所では活動人数の限界や規模の限界がありました。さらにはテレビ取材の影響もあり、通常業務も手いっぱいとなり、ご希望の納期に間に合わせることができない、そんな状態が続いておりました。
このような課題解決のためには、従業員を増やすより他の方法はありませんでしたが、そうなると旧事務所では狭く、営業活動するにも限界があり、私たちはオフィス移転を考える段階まできていました。

外観看板

そんなタイミングで、地元の白菊温泉が廃業されたという話を小耳にはさんだのです。当初は、町内会長を務めていて地域の情報を耳にすることの多い社長が、銭湯のような広いスペースがあるならば、誰か飲食店でもやってくれないかなぁと考えていたそうです。僕は、滅多に見る機会がないことだし、折角だから見に行こうと思い、従業員の皆と白菊温泉へ見学に行きました。すると、白菊温泉に行っていた頃の記憶が蘇ってきました。

60代くらいの白髪のおじさんが目を瞑ってふぅ~っ、と疲れを癒しに来ていたこと。友人宅に泊まった時にだけ来れるこの場所の、非日常な空間が楽しくて友達と大はしゃぎし、おじいさんに怒鳴られたこと。
脱衣所では鏡の前でおじさんたちが「ドラゴンズが負けた」だの「福留がええど」だの、野球談義に花を咲かせていたこと。
結露したショーケースの中から、冷えたコーヒー牛乳を買い、番台の前で一気に飲み干して友達の家に帰ったこと。泊まる時だけ味わえる特別な空間。そんな記憶が残っていました。

白菊解体前

そんな記憶と共に、薄暗く、ほこりを被った浴槽を見ていると、白菊温泉がこのまま廃業してしまうのは何とも勿体ない、地元に愛された場所に人の気配がなくなるということは、こんなにも切なくて悲しいものなんだ。そんな思いが溢れてきました。続けて行くことができないから、壊して、新しいものを作る、それではこの場所で築いてきた歴史がなくなってしまう。この歴史をもう一度つくるには、長い時間と想いの蓄積が必要になってしまう。そんなことを考えるようになりました。ここには歴史がある。利用していた人の思い出もある。きっと地元の誰しもがこの銭湯には何かしら思い出がある。疲れを癒してくれたり、モクモクと煙突から昇る煙だったり、光る看板だったり、そして何より会話が生まれコミュニティがあった場所だったはず。

心得

オーナーさんに「今後どうされるんですか?」とお聞きすると、しばらくはこのまま残すが、今後はスケルトン(取り壊してしまう)にする可能性があるとのことでした。

その日の夜、いろんな想いがかけめぐりました。何か面白いことができないか。何かできるのではないか。と。

洗面ケロリン

思い返すと、僕が大人になるにつれて、地元の銭湯も少なくなっていきました。元々名古屋市西区は銭湯が多い地区でしたが、学年が上がるたびに学区のどこかの銭湯がなくなっていきました。考えてみると、郊外にスーパー銭湯などが建ち始めたのもこの頃だったように思います。やはり入浴にプラスアルファして、食事処があったり、漫画を好きなだけ読めるスーパー銭湯のような、資本力があってエンタメ性が高いところにお客さんが流れていったのでしょう。

駄菓子屋も同じ状況で、なんでも揃うコンビニやスーパーにお客さんが流れ、少子化も相まって徐々に減少して行きました。中小の駄菓子企業は、資本力のある企業に負け、撤退していったのです。そんな部分も、銭湯と駄菓子業界が重なってみえる部分でもあり、どことなく、「子供が社会を学ぶ場としての駄菓子屋」と「裸の社交場であった銭湯」が重なって見える部分でもありました。

ロッカー

私たちmyameは、飴をメッセージや気持ちが伝わるコミュニケーションツールとして、多くのお客様に飴を届けてきました。飴は、「飴ちゃん、飴ちゃん」と擬人化して呼ばれるように、親しみやすいお菓子、また、コミュニケーションのきっかけを作るお菓子として古くから重宝されてきました。まいあめはこの、飴ならではの価値、つまりコミュニケーションツールとしての価値を再発見し、歴史ある組み飴を新しいメディアとして昇華させてきたのです。
お客様や地域の方の関係性を構築して行くたび、myameはコミュニケーションを生み出すことに長けていると感じます。
そこで、私たちmyameのコミュニケーションを生み出す機能に、銭湯の機能を掛け合わすことができれば、世の中にない素敵な場所ができるのではないかと考え、銭湯オフィスのプロジェクトをスタートする決断をしました。

浴槽

考えを深めてみると、漫画テルマエロマエに代表されるように、古代ローマ時代、銭湯のような場所は社交の場でした。
日本でも江戸時代、銭湯は大衆の疲れを癒すのはもちろん、古代ローマと同様に社交の場としても利用されていたそうです。
つまり、コミュニケーションが生まれる場所として、銭湯があったのです。
僕の思い出でも挙げたように、おじさんたちが湯船に浸かりながらああでもないこうでもないと話をしていたように、銭湯には沸々と上がる蒸気のように、熱くコミュニケーションが生まれる場の力があると思っています。そして、地元民のココロとカラダを癒し続けた存在として歴史があります。歴史を潰すのは簡単ですが、壊して歴史を同じように重ねてくのは難しい。紡いできた「時間」は揺るぎない価値を持っています。であれば、それをまっさらにするのではなく、その歴史や機能を活かした場所にすることはできないか。壊すのではなく地元の大切な場所として残したい、文化として残したい、そう考えたのです。

解体

約6ヶ月の工事期間を終え、銭湯としての機能は無くなったものの、白菊温泉の名残をどこかに残すことは今回の必須条件でした。そのほうが昔ここに足繁く通った方はもちろん、地元の方達が喜んでくださると思ったことと、この歴史を受け継ぐ我々の責任と考えたからです。
スケルトンにして綺麗な新しいオフィスを作ることは簡単ですが、僕は地元あっての企業であり、地元に貢献してこそ組み飴の文化を残せると思っています。
私たちmyameらしいことってなんだろう、そう考えたときに「地元に貢献できる企業でありたい」。そう考えたからこそ生まれたアイデアなのかもしれません。

そんな想いを持って出来上がったオフィスがこちら。どことなく銭湯の雰囲気を残す仕様にし、日本の文化を感じられるような畳の床だったり、和モダンな照明になっていたりします。終業後はカウンターでお酒を飲みながら談笑したり、従業員からは社内イベントとしてスナック企画などやってみたい!と声が上がっていたりします。

オフィス外観

フリースペース正面

足湯全貌

給湯

部屋の中央には足湯ができるオブジェがあります。元々の白菊温泉の浴槽と同じタイル色にしてあり、オフィスの前を通った方からはしばしば「新しい銭湯?」と言われる内装になりました。色々な方とここで足湯をし疲れを癒しながら、たわいもない話ができれば本望です。
また、将来的にはこのスペースでイベントを開催したり、子供向けのイベントができればと考えています。地元に根ざしてこそ、その想いは変わりません。

商談スペースはタカシートを貼り、工場っぽさを出しています。ここで組み飴の打ち合わせを行なったり、色々な方とより密なコミュニケーションを図れたらと考えています。

商談スペース

オフィスの事務スペースは銭湯だった当時の壁をそのまま活かしています。
ちなみにこのスペースは女湯でした。

オフィス

事務所リノベ前
解体前との比較 窓や壁の殆どは銭湯当時のまま

事務所2

会議スペース
随所に銭湯当時の様子を残して

弊社では飴の袋詰めの工程も行っています。皆様に安心安全に弊社の飴を食べていただけるよう袋詰めの衛生環境も整えて、HACCPの認証を取得できるように動いています。

加工場

私たちは飴一粒から生まれるコミュニケーションを日夜考えています。この場所はオフィスですが、多くの人をつなぐハブになればと思っています。
お客様はもちろん、従業員、取引先、地域の人とmyameをつなぐ場所になればそう願ってやみません。

これからmyameの新しい旅が始まります。
より良い船出となるよう、皆様ぜひ応援していただけると幸いです。

夜明け外観
引っ越し月 2023年12月29日早朝 朝焼けの様子 今後の希望とともに

繁忙期の一番忙しい時期、ただでさえ忙しい時期に、引っ越し業務であったり、備品などの購入やオペレーション策定など、スタッフにかなり負荷をかけてしまいました。しかし皆の力がなければできなかったことであり、皆の環境を良くしようと考えたことでもあります。この新しい場所で、新しい企画&プロダクトが生まれる未来を考えると、楽しみで仕方ありません。

オフィス外観2

今回オフィスのリノベーション設計をしていただいたiks designの小林さんには、感謝しかありません。
弊社の事業を理解した上で、無茶なお願いやコンセプトを設計に落とし込んでいただきました。出来上がったオフィスでは、カウンターやデスクで冗談を言い合ったり、笑ったり、考えたり、日々新しいコミュニケーションが生まれています。
この場を借りて、小林さんに改めてお礼をさせていただきます。

また、現場の施工でお世話になりました宮地建設様、他にも様々な職人さんの力によってこのオフィスは出来上がりました。本当にありがとうございました。

フリースペース2

改めて経済活動は繋がりだと実感しています。

突飛押しもないアイディアが生まれて、白菊温泉の皆様へご相談したところ、非常に温かい応援、後押しをしていただき、 そこからiks designの小林さんに相談し、コンセプトを話し、設計図を描いてもらい、宮地建設さんが施工管理して、解体業者、左官職人、タイル職人、造作家具職人、畳職人、内装屋さん、水道屋さん、電飾、照明、その他多くの方の力をお貸りし、このオフィスが出来上がりました。その循環はまさに飴も同じで、砂糖大根を作っている農家さんがいて、砂糖を精製してくれる業者さんがいて、原料商社があって、運送会社があって、飴の職人がいて、初めて飴になります。そこから企画・販売をする私達がいたり、小売店に並び、はじめて皆様の手に飴が届いていきます。多くの繋がりがあってこそ、経済が巡り巡っているのだと実感したのです。
この繋がりが僕等を支えていて、この繋がりが経済や文化を生み出しています。
繋がり続け、そして繋がりを生み出していこうと思います。途切れないように、大切にしながら。

足湯浸かり